Web制作会社と事業会社(インハウス)の違い
WEBデザイナーの就職事情──制作会社と事業会社の違いと就活の進め方
WEBデザイナーの主な就職先は、Web制作会社・広告代理店などの受託側と、自社サービスを持つ事業会社(インハウス)の2つに大別されます。どちらが良いという話ではなく、身につく力と働き方の性質が違います。
| 比較軸 | Web制作会社(受託) | 事業会社(インハウス) |
|---|---|---|
| 案件の種類 | 業種・規模の異なる案件を多数経験 | 自社サービスに継続的に関わる |
| スキルの伸び方 | 短期間で幅広く。スピードと対応力がつく | 一つのサービスを深く。数値改善の経験が積める |
| 納期・繁閑 | 案件の締切に左右されやすく、繁忙期は負荷が高まりやすい | 比較的計画的だが、施策時期に集中することもある |
| 関わる相手 | クライアント、ディレクター、外部パートナー | 社内の企画・営業・エンジニア |
| 評価のされ方 | 案件の完遂と品質、対応スピード | 事業KPIへの貢献 |
| 未経験の採用 | 新卒・第二新卒の採用枠が比較的多い | 実務経験を求めるケースが多い |
就職活動の進め方
- 2年次の早い段階で方向性を決める:制作会社志望かインハウス志望かで、作るべき作品の性格が変わります
- ポートフォリオを先に仕上げる:応募開始に間に合わせるのではなく、応募開始時点で完成しているのが理想です
- 学校の求人票と一般公募を併用する:学校経由は選考が通りやすい反面、選択肢が限られます
- インターン・アルバイトで実務に触れる:短期でも実務経験があると、面接での説得力が変わります
- 企業研究を「制作実績」から行う:その会社が作ったサイトを見て、良いと思った点を具体的に言えるようにしておきます
- 公式情報と口コミを分けて扱う:ここが最も誤解の生まれやすい部分です
公式データと口コミの読み分け
企業選びで参考になる情報には、性質の異なる2種類があります。混同すると判断を誤ります。
- 企業の公式採用データ:平均勤続年数、有給取得率、育休取得率、平均残業時間、離職率など。統計として一定の信頼性がありますが、集計範囲や算出方法は企業によって異なります
- 匿名口コミサイトの情報:現場の雰囲気、評価制度の運用実態、上司との関係など。実感がこもっている反面、投稿者の立場や在籍時期に偏りがあり、事実として断定できるものではありません
入社後に直面しやすい課題と、社内制度を活用した改善の進め方
WEBデザイナーとして入社した後、多くの人が同じような壁にぶつかります。ここでは課題を隠さず挙げたうえで、いま所属している会社の中でできる打ち手を中心に整理します。
起こりやすい3つの課題
1. 希望と違う業務からのスタート
新人がいきなりサイト全体のデザインを任されることは稀です。バナー制作、既存ページの更新、素材の書き出しといった作業から始まるのが一般的で、「思っていた仕事と違う」と感じる人がいます。ただしこの段階は、社内の進め方やレギュレーションを覚える期間でもあります。作業を早く正確にこなせるようになると、任される範囲は自然に広がります。
2. 想定より低い初任給と、限られた賞与
未経験スタートの年収は250万〜350万円程度が目安で、他業種と比べて高い水準ではありません。ただし給与だけで判断するのは早計です。次の複数の軸を併せて見てください。
- 実際の残業時間と、残業代が全額支給される運用になっているか
- みなし残業が設定されている場合、その時間数を超えた分の扱い
- 未経験から正社員としてスキルを積める環境かどうか
- 研修制度、書籍購入補助、勉強会参加費の負担など学習支援の有無
- 昇給・昇格の基準が明示され、実際に運用されているか
- 住宅手当や資格手当など、額面に表れない待遇
3. 繁忙期の残業と納期プレッシャー
案件が重なる時期は業務量が増えます。これは受託型のビジネス構造上、ある程度避けにくい面があります。
社内でできる改善アクション
課題を感じたとき、すぐに転職を考える前に試せる手段は意外と多く残っています。
| 課題 | 社内で取れる打ち手 |
|---|---|
| 担当業務が単調 | 上司との1on1で担当したい領域を具体的に伝える/小規模案件の提案を自分から出す/社内勉強会で得意分野を発信する |
| スキルが伸びない実感 | 目標設定面談で習得したいスキルを目標に組み込む/社内研修や外部セミナー補助制度を使う/ウェブデザイン技能検定などの資格取得に挑戦する |
| 評価が上がらない | 評価基準を上司に確認し、達成度を数値で示す記録を残す/制作物の成果(CTR改善など)を自分で計測して報告する |
| 部署・職種が合わない | 社内公募制度や社内FA制度を使って異動を申請する/兼務やヘルプという形で他部署の業務に関わる |
| 残業が多い | 見積り工数の根拠を明示して相談する/進行上のボトルネックを記録して改善提案する/タスクの優先順位を上司と合意する |
成果を出す工夫が、選択肢を広げる
社内公募や社内FA制度は有力な選択肢ですが、それだけに頼るのは得策ではありません。こうした制度は、現職での実績が評価材料になることが多いためです。まずは今の担当業務で「任せられる人」という評価を得ることが、結果的に希望を通す近道になります。
具体的には、作った制作物の効果を自分で計測して報告する、レギュレーション整備やテンプレート化で чチーム全体の作業時間を減らす、後輩の指導役を引き受けるといった行動が、評価につながりやすい動き方です。数字と行動で示せる材料を蓄えておくと、異動の相談も、将来的なキャリアの選択も進めやすくなります。
なお、安全に関わる問題、法令違反、深刻なハラスメントといった事象については、社内の相談窓口や外部の公的相談機関に速やかに相談してください。これらは我慢して改善を待つべき性質のものではありません。